下北沢で勢いを爆裂させるバンド、シャンプーズの原動力に迫る<Web完全版>

下北沢爆裂エナジーポップバンド、シャンプーズ。2017年に結成すると、「シモニテ登竜門’17」で優勝。2022年1月には初の主催サーキットイベント「爆裂洗髪祭2022」を成功させると、「自転車でGOGOツアー」と冠した、自転車で名古屋から大阪に向かい滝行をするという前代未聞のツアーも無事完走。今、下北沢で一番勢いと行動力のあるであろうシャンプーズにインタビューを敢行した。彼らが滾らせる熱さの裏側を紐解いていく。

――まずは、今の4人が集まった経緯を教えていただけますか?

モミー(Vo):僕が新しくバンドを組みたいなというところから始まっていて。そもそもいいプレイヤーって既にどこかに所属していると思っていたので、引き抜くしかないんだろうなと思ったんですよ。なので、まず前のバンドで対バンしたときに印象が良かったギターの樹里さんに「サポートでいいので一緒にやってくれないか」と声をかけました。そしたら、「モミー君とだったら一緒にやりたいからメンバーとしてやらせてくれ」と最初に言ってくれて。ベースとドラムに関しては、今とは違うメンバーをサポートにして活動を始めました。

――樹里さんはモミーさんとだったらやりたいと思った決め手はなんだったんですか?

樹里(Gt):面白いライブをやってたので、一緒に音楽できたらいいなって思っていましたね。

――マリオさんとざしきわらしさんも同じように引き抜いた形だったんですか?

モミー:2017年の2月5日に樹里さんと一緒にやることになったんですけど、それから少しして僕が新宿Marbleに弾き語りで出演したときに、マリオが別のバンドのサポートとして出演していて。いいドラマーだなと思って、ライブ後に誘ってサポートをスタートしてもらいました。「シモニテ登竜門」っていう「下北沢’にて」への出演権をかけたオーディションがあるじゃないですか。同じ年の11月にそれに優勝して「下北沢’にて」に出演することになるんですけど、オーディションに優勝したら加入しましたね。

――優勝したのが加入のきっかけだったんですか?

マリオ(Dr):そうですね。優勝するまでは加入する気は1ミリも無かったといっても過言ではないです。
モミー:正直でよろしい。(笑) ちなみに、僕はオーディションの前日に「絶対に優勝するから、今のうちから入るって言っておかないとダサいぞ」って言ってるんですよ。(笑) もちろんすごく自信があったわけではなくて、優勝するって口にすることでできるかもしれないっていうことなんですけど。そう言ったら、「優勝してから考えまっせ」みたいなことを言われまして。(笑)
マリオ:そんな言い方は絶対にしてないけどね。
モミー:そういうことを言った結果優勝しまして、僕に「入ります」って言ってきたと。それをこういうインタビューの度にほじくりかえしてますね。(笑)
マリオ:おそらく一生言われるんだろうな。
モミー:絶対に言っていきます。いじり続けますけど、でももちろんありがたいなと思っています。ざしきが加入したのは結構最近で、2020年の5月にシャンプーズの前のベースが抜けたんですけど、同じ時期にざしきがやっていたバンドが活動休止から解散になって。面識はあったので、ベースもいいしコーラスもできるっていうことでお誘いしました。でも最初は断られていたんですよ。なのでLINEだけじゃなく電話で説得をさせてくれと1時間半くらい喋った結果、じゃあサポートからっていうことになって。それが10月の終わりから11月で、2021年の4月に僕の狙い通りに入ってくれることになったという感じです。

――最初に断ってたというのはなにか理由があって?

ざしきわらし(Ba):前のバンドが解散してから、違うことをやろうとしていたんです。ベースはもうやめようとしていて。でも電話で1時間以上も言ってくれる人ってなかなかいないと思うので、サポートからだったらと。

――モミーさんの説得が功を奏したんですね。先日は初の主催サーキット「爆裂洗髪祭 2022」を無事に終えられましたが、いかがでしたか?

モミー:大変でしたね。当日は自分らが好きなバンドを呼べて、ちゃんとお客さんが入ってくれて、僕らを見に来てくれたお客さんの前でライブができたので、楽しいのは当然なんですけど、それを優に上回る大変さ。運営は僕とスタッフでやったのでメンバーはほとんど関わってないんですけど。大きいサーキットとかイベントを運営している人へのリスペクトが上がりましたね。

――樹里さんはいかがでしたか?

樹里:もう覚えてないな。(笑)
マリオ:それじゃあインタビューにならんよ。(笑)
樹里:僕はいつでも過去じゃなくて未来を見てるんだ。
モミー:それ格好いいね。
樹里:ああ、でも思い出した。出てくれたバンドが、みんなシャンプーズへの思いをちゃんと語ってくれててすごい嬉しかったですね。普段会って話してても見えない部分が見えて。口先だけで言ってる「ありがとう、好きだよ」じゃなくて、すごく気持ちが感じられるMCだったりライブの内容だったりしたので嬉しかったです。

――それは主催バンドならではですね。マリオさんはいかがですか?

マリオ:僕は運営に関わってなかったので楽観的なのかもしれないですけど、ここまでバンドを呼べるのってやっぱりモミーさんのおかげですし、開催できたことにすごく感動しましたね。本当にやってよかったって思いますし、今後も継続してやりたいですし。もっといいサーキットフェスにしていけたらいいなとすごく思います。

――あとは気になるのは、名古屋から伊勢神宮、そして大阪まで自転車で移動した「自転車でGOGOツアー」です。

マリオ:これは話が長くなりますね。

――発案したのはモミーさんなんですか?

モミー:俺だよね。バンドをはじめてそこそこ長い年月が経ってしまって、「シモニテ登竜門」に優勝したっていうのしかトピックがなくて。自分らが持ってる、自慢できるような経歴ってそんなにない。それこそ「RO JACK」とか「出れんの!?サマソニ!?」に優勝するとかが転がりこんでくればいいですけど、それを待ってるくらいだったら自分らの体力を担保に何かを起こしてやろうと思って。それで樹里さんとふたりで喋ってて、最初はよくある、イベントでソールドアウトしなかったら罰ゲームみたいなものにしようっていう話をしていたんですよ。そしたら樹里さんが、「お客さんが来てくれるか来てくれないかで僕らが身体を張るのは違う」って話をしてきて、確かにその通りだと。自分たちが自発的にやるものにしたいなと思ったので、伊勢神宮にお参りに行こうということになって。原付で行こうと思ったんですけど免許持ってないメンバーもいるので、じゃあチャリにしようと。

――最初にそれを聞いたとき、マリオさんとざしきさんはどう思いました?

ざしき:10年以上チャリに乗ってなかったので、乗れるのかさえ分からないっていうところからのスタートで不安でした。(笑) でもそういう面白いことは好きな方なので、やること自体に抵抗はなかったですね。
マリオ:僕はぶっちゃけて言えばなにも思ってなかったので。(笑) そういうことやるんだ、いいよ、みたいな感じでした。
モミー:ふたりとも全然反対してこなかったのでびっくりしたんですよ。絶対やりたくないって言われると思ってて、特にざしきにはどうやって説得しようかとしか考えてなかったので。でも最初から「あ、やりましょう」って。不安はあるとか言ってるけど、そんな言い訳じみたことは言ってこなかったですからね。
ざしき:まあやってみないと分からないと思うし。
マリオ:ざしきさんが一番男気ありそう。(笑)

――やってみていかがでしたか?

モミー:チャリは大した事なかったですよ。(笑) いや、300kmくらい楽勝なんだって思われるとちょっと違うんですけど。大変だし、時間もかかるし。
マリオ:もちろん辛い部分もありました。途中峠を越えたんですけど、あれはもう登山でしたね。自転車漕げなくて、歩いてました。
モミー:あれを自転車で駆け上れる人はバンドなんか辞めた方がいいです。(笑)
マリオ:すでにアスリートになってるレベルだよね。
モミー:でも楽しかったですよ。ざしきは60kmとかで脱落になっちゃったんですけど、むしろそこまでよく頑張ってくれて。付き合わせてすまんっていう感じなんですけど。(笑) あとの3人に関しては、計290kmの中でそんなに嫌っていう瞬間ってなくて。山登りのときはきつかったですけど、でも綺麗な景色が沢山見れたし、いい汗かいたな、くらいの感じでしたね。

――やる前はどう思ってました?

モミー:行けるっしょって思ってました。事故だけ起こさないように、怪我はしないようにっていうくらいで。
樹里:時間かかるだけで普通の移動じゃんみたいな。

――すごいですね(笑) ざしきさんは途中からメンバーを見守る側でしたけど、見ていていかがでしたか?

ざしき:マイナスなことを言わないので、さすがだなと思っていましたね。動画が届くんですけど、すごい楽しそうで。私も見て笑っちゃうような動画とかあったりして、楽しんでるなっていう印象でした。

――そうやって長旅を経て、バンドの仲は変わりました?

モミー:仲は変わらないですけど、尊敬できるようになりましたね。今まではどっちかというと、プレイヤーとしての尊敬があって背中を任せていたっていう気持ちが強かったんですけど、今は人としての尊敬もあるかなって。楽しかったとはいえ、車で行った方が早いし、新幹線で行った方が楽だし。それを文句も言わずにやってくれて、こいつら強いんだなって思いましたね。

――マリオさんはいかがですか?

マリオ:モミーさんが言ってたみたいに、尊敬する部分が増えたっていうのはあるのかなと思います。プレイヤーの部分以外でも、人間として。仲良くなったんじゃないかなとも思います。
樹里:信頼できる部分とか頼もしさとかがいろいろ見えてきて、一緒にこの先もやっていっていいんだなっていうのは改めて思いましたね。
モミー:いやあ、なんかね、山もあり、坂もあるんですよ。
ざしき:……ん?
樹里:谷もあるじゃないの?
モミー:いや、坂は寒いんですよ。
マリオ:物理的な話か。(笑)
樹里:人生に例えるのかと思った。
モミー:きつい場所の話がしたかったんですよ。(笑) 山じゃなくても、街中にも坂はあって。そのときに、よし頑張ろーってみんなで言うんですよ。それがね、素晴らしかったです。

――2月16日にリリースしたアルバム『WASH YOUR HEAD』についてもお聞きできればと思います。リリースして少し経ちましたが、実感などはありますか?

ね。
モミー:僕は作った曲に対してすごい思い入れがある方ではなくて。自分が作った過去のもの、成果として出したものなので、こんなもんじゃねえよっていう気持ちが強いかもしれないですね。

――曲はモミーさんが全部作られてるんですよね。曲によって違うとは思うんですが、どういったものからインスピレーションを受けることが多いんですか?

モミー:どうですかね。情景が浮かんで作っている曲ってほとんどないんですよ。挫折とか苦しみとかが根底にあって作り出してるっていうのはあるんですけど、いろんな苦しみをつぎはぎして作ってるっていうか。特定の苦しみで作ってるっていう感じではないんですよね。でも曲名からイメージを取ってきてるものもあって、今回で言うと新しい曲が”東京”と”シーサイド”なんですけど、”東京”に関しては東京にいる自分をイメージして書いています。”シーサイド”は、”ウルトラマリンブルー”っていう曲のMV撮影をしたときのことを思い出して書いている曲なんですね。なので最近の曲は割と情景とかが元になってるかもしれません。

――感情で分類すると、苦しみとかネガティブ寄りなものが多いんですか?

モミー:そうですね。陽の感じというよりは陰だと思います。

――そういう感情がモミーさんの活動の原動力になっていたりもするんでしょうか?

モミー:うーん。すごい明るい気持ちで365日生きている人って、僕の印象ではほとんどいないと思ってて。僕も、「楽しい!」っていう瞬間ってほとんどなくて。「こういう人間だけど前を向いて生きていくしかないよね」って自分に言って、自分の背中を押してバンドをやってるんですよ。で、僕は僕のことしか分からないんですけど、どうやら僕と同じようなことを思っている人が多いらしいっていうのは分かってるんですね、情報として。バンドがちょっとずつ大きくなるにつれて、「励まされました」とか「明日も頑張れます」っていう言葉をいただくこともあるし。ライブでもたまに言うんですけど、大きい音聴いて大きい声出してると、強くなった気になれるんですよ。曲作りでもそういうのは多くて、暗い言葉を並べるんじゃなくて、サビとかでは「辛いこともあるけど頑張ろう」っていうニュアンスで言葉を繋げて曲を作っているつもりですね。

――メンバーの中で一番長く一緒にやっている樹里さんは、モミーさんが書く曲をどう感じていますか?

樹里:絶妙なところでモミーにしか書けないことを書くなあと思います。多分自覚はないんでしょうけど、”光る街”の〈花火のような華やかさも 儚さとともに消えた〉ってすごいなと。普通花火だったら儚く消えるんだけど、華やかさが儚さと一緒に消えて、その先が虚無なんですよ。これってすごいなって。多分そういうことを思ってるって自覚ないんですけど。
モミー:ああ、なるほど。
樹里:虚無だけど、それでもその先の光る街に向かっていくっていう底力が強いよなって。
マリオ:すごい。どういうつもりで作ったんだろう。
モミー:そこまでは確かに考えてないな。でも生きてて虚無しかなくない?って思うけど。
樹里:そんなことないよ。
モミー:でもそのくらいに思ってて。飲み会とかもそうだし、楽しいことのあとって虚無がくるじゃん。虚無っていうか、何やってるんだろって思う瞬間ってすごいあるから。花火とか特にそうじゃん。
マリオ:モミーさんらしいなあ。
モミー:俺は虚無を感じ続けて生きてるのかな。たしかにそこまで感じてもらうために書いた歌詞ではないけど、そういう虚無の感情はわかる。遊園地行ったあととかもさ、何やってんだろっていう虚無感が遅れて来るじゃん。
マリオ:来ないなあ。「また行きたいな」ってなる。
モミー:疲れとかが勝っちゃう。かかった時間とかさ。
樹里:なんでもかんでも計算したがるからいけないんだよ。
マリオ:そうだよ。血が通ってない(笑)

――面白いですね。そういう考えがあるからあの歌詞が書けるかもしれないっていう。3月からはアルバム発売記念の『君の頭を洗いに行くぜツアー』が始まりますが、ツアーに向けた意気込みや今後の目標を教えてください。

マリオ:そもそも我々は今までちゃんとツアーをやったことがないので、「やったるぞ」っていう感じですね。今までまともに活動してなかったっていうのを払拭させるような動きができたらいいかなっていうのはあります。メンツもかなりいいメンツを揃えられていると思うので、みなさんに見ていただいて「シャンプーズやっぱすげえんだ」って思ってもらって、次に繋げていけたらなと思います。
樹里:今回は変な仕掛けのない普通のツアーなので、ライブハウスのステージで音楽とパフォーマンスで見ている人を楽しませられればと思います。ステージから楽しそうにしているみんなの姿を見れるのが一番幸せなので。そうしたらまた普通じゃないツアーやったりして。(笑) いろいろやって、シャンプーズしかできないような活動を続けて、それが日本中、世界中のみんなが認めてくれればいいなと思っています。
モミー:へえ、いいコメントするじゃん。ちゃんとしてる。
マリオ:我々血が通ってますから。
ざしき:個人的にもそうですけど、色んな地方でライブするっていうのがはじめてなので、それは楽しみです。同じライブをする日ってないと思うので。メンツが違うのもそうだし、メンツが同じでもそれぞれ違うと思うので楽しみなのと、そこで次への課題が見えてくると思うので、それも楽しみなところではあります。
モミー:じゃあ最後は私ですね。
マリオ:絶対ちゃんと締めてくださいね。
モミー:シャンプーズは今までツアーもCDのリリースもそんなにしてきた方じゃないですし、ライブしかやってこなかったバンドだと思っていて。自分らが自発的に動くイベントっていうのもほぼやってきてなかったんですよ。その中でも与えられた場所でちょっとずつ結果を残してきたからここまで来れたとは思っているんですけど、今回のリリースを機に、自発的に動いて色んな人に知ってもらえるようにしていこうと気合を入れています。やっぱりライブバンドなので、直接目で見て音を感じて、耳だけじゃなくて身体で感じてもらうっていうのが僕らのやるべきことかなと思うので。……あと覇気ね、覇気。覇気ってあるんですよ!
マリオ:急にどうした。(笑)
モミー:(笑) それってCDからは伝わらない、肉体同士が向き合った瞬間しか感じられないものだと思っていて。ツアーでは初めて行くところもすごく多いので、そこで初めて観た人たちに感じてもらえたらなと思っています。あとは今後の目標としては、終わったこととか過去がどうっていうよりは、未来にこんなことをして楽しませてやろうとか、こんなことをしたら最高なんじゃないかっていうことをどんどんやっていって、挑戦できるバンドでいたいなと思っています。まだツアーには行ってないですけど、僕はもう次を見ているので。ツアーが終わってからの動きも考えてますし、次の曲も作ってますし。もっとパワーアップできるようにいい曲を作って演奏する予定なので、よろしくお願いします!

<Written by 村上麗奈/PHOTO by 清水舞>


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