小林賢司と小林要司、兄弟2人から成るバンド、Large House Satisfaction。10年以上ともに過ごしたドラマーの脱退、2020年からライブシーンに大打撃を与えたコロナ禍……それでも迷わずライブハウスに立ち続ける彼らの歩みを振り返る。
――まずは結成の経緯を教えてください。
小林要司(Vo/Gt):一番我々にとって難しい質問。
小林賢司(Ba):最初は俺がバンドを組んで、要司がギターを弾けたので入れて、あとは友達とやっていて。でもボーカルが来れない日があって、代わりに歌ってくれないかって要司に言って歌ってもらったら、当時のドラムの秀作と俺で顔を見合わせちゃう感じで「これだ」ってなって、ボーカルにしたっていう。
要司:そうだね。基本的に他でバンドをやったことないから、他人だけでやってるバンドの気持ちがまったくわからない。みんなのライブみると、ライブしてる背後に「KIZUNA」って見えるよね。(笑)
賢司:他人同士だからね。俺らは血縁が出てくる。「BLOOD!」みたいな。(笑)
――血縁だからこそのメリットみたいなことは感じたことあります?
要司:なんだろうな。あんまり兄弟でやってることのメリットっていうのはそんなに感じたことはない。何考えてるかとかどういう人間なのかっていうのはある程度分かってますけど、でも他のバンドも長いことやってたら同じような感じになるんじゃないのって。
賢司:利点は考えたことないですね。難点も別にないかな。すごく身軽だなっていうのはなんとなくありますけど。
要司:嫌な気持ちになってるのは親くらいじゃないですか?(笑) 2人ともミュージシャンやっちゃってるし、しかも同じバンドやっちゃってるからどっちかが売れるとかもないし。
――今まで活動する中で、ドラムの田中さんの脱退や事務所設立、コロナ禍など様々な転機があったと思いますが、おふたりにとってのターニングポイントというと?
賢司:俺が一番思っているのがCLUB251。当時下北沢ってサーキットフェスがあったんですけど、251枠で当時の店長が俺らを出してくれて。たまたまそこに音楽関係者が見に来ていて、事務所が決まることになった。
要司:そこは一個大きいところで、意識がちょっと変わったのかなと思います。でもやっぱり俺の中では前のドラムが抜けたときは、10年以上一緒にやってた仲だったから大きかったですね。でも迷わずやるでしょって。お互い意思確認は一言二言くらいだったんですけど、そこで共有できたのはいいなと。
――田中さんが脱退されるときは不安はありました?
要司:不安っていうか、めんどくせえなあと。ドラムを探さねえとなと。
賢司:まあ仕方のないことだったので、不安とかは特にないですね。ありがとうとか別の気持ちはありましたけど。
要司:今まで付き合ってくれてありがとねっていうね。
賢司:そう。これからどうしようっていう不安っていうよりも、要司が言ってためんどくささ、ドラム決めないとなみたいな。転職するのとかも人間関係作るの面倒くさいじゃないですか。新しいドラムの人とまた新たな人間関係を作らないといけないのは大変だなっていう感じでしたね。
――新しくサポートドラムを迎えて活動するようになってから、バンドとして変化はありましたか?
要司:めちゃくちゃありましたね。曲もそうですし、ライブの構成とかも。
賢司:車で言うとエンジンが変わったみたいな。ボディはLarge House Satisfactionですけど、エンジンが変わる。結構重要な部分が変わったっていう感じなので、見てる人の印象も変わるんじゃないかな。
要司:いいエンジンになったっていう話ではなくて、また別のものに変わった、別のいいやつに変わったっていう感じですね。
賢司:今サポートやってくれてるSHOZOは結構オルタナティブというかパンクな部分を持っている奴なので、そういう部分ではサポートだけど俺らに影響を及ぼしている感覚はすごいありますね。本当に秀作とSHOZOは別サイドの人間なんですよ。右と左くらい音楽の考え方が違うよね。
要司:狂ってるのが共通しているくらいですね。頭がおかしいのは共通してる。
――SHOZOさんをサポートに選んだ決め手はなんだったんですか?
賢司:候補は何人かいて、ライブでもSHOZO以外の2人にも叩いてもらったんです。正直誘ったときって、俺と要司はSHOZOのこと1回しか見たことないんですよ。しかも何年も前だからドラムもそこまで覚えてない。でもスタイルとか人間性とかいろいろ考えたときに、できるんじゃないかって誘って、実際スタジオとかライブやってみたら、他の奴も良い奴だったけどSHOZOが一番リズムが近いというか。
要司:あと服がお洒落。(笑) 実はサポートドラムどうするってなったときに、お互いSHOZOの名前が一番最初にでてきたっていうのがあって。それは不思議だなって。
――そうだったんですね。2020年以降、Large House Satisfactionはコロナ禍でも積極的にライブを続けていらっしゃいましたが、そこにはどういう考えがあったんですか?
賢司:コロナ禍があって俺らもリリースツアーが飛んだりして、どうやら本当にできないみたいだなっていうことを感じて。でも本当に全部止めたりするのはよくないことだなって思って、251に毎月ワンマンできないかって頼んで、他のライブハウスもイベントがどんどんキャンセルになってるから電話して、ワンマンだけでもやろうかなって。それでお世話になったところに多少でもお金を落とせればいいなっていう感じでしたね。あとは配信とか、無観客とか客いるとかあんま関係ないのかなって。意外に客ゼロでもできる。てかやりだしたとき客いなかったし。
――なるほど。
賢司:もちろんいた方がいいですけどね。(笑) ライブハウスの地下に慣れてるからか分かんないですけど。でもお客さんは来てくれる人もいたので。1人1万円ライブとかもやったよね。30人限定で。それも来てくれて。
要司:面白半分かわかんないけど来てくれたね。
賢司:でも面白半分で1万円を中々払えないじゃないですか。俺らの力っていうよりこれはお客さんの力。
要司:すごいよね。1万円だよ?外タレじゃないんだから。
賢司:しかも251ですから。なにか特別な環境でもないし。でもまだお客さん戻ってきてないから、早くみんな戻ってきてほしいなって思いますね。
――「ライブを全部止めるのはよくないと思った」というのは、気持ちの持ちよう的な意味でですか?
要司:いや、やるもんでしょっていう。でもそんなに考えてない。
賢司:俺はやることに関しては結構考えてたよ。やった方が格好いいっしょっていうのもあるけど、ライブができなくてライブハウスもなんとか頑張ってやってくれてて、そういうときに自分たちが休んで大丈夫になったときに戻ってきて、またよろしくお願いしますって言うのって気持ち悪いじゃないですか。都合のいいときだけ戻ってくるのはあんまり格好良くないなって。それを要司に言ったら、やるっしょみたいな。
要司:俺はだから「やるっしょ」しか言ってない。他の休んでるバンドを否定してるわけでもないんですけどね。
賢司:してますけどね、僕は。
要司:怒られずに済んだのに。(笑)
賢司:二度と戻ってくるなと。どの面下げてライブハウス戻って来とんねんっていう。
要司:はい。そういう気持ちです、2人とも。
賢司:だからこの期間、病気になっちゃうから怖い、やってたら怒られるかもしれないから無観客だけやっておけばいいやんっていう人は二度とライブハウスでやってほしくないですね。
要司:書いてください、これ!
賢司:だからやってた奴が偉いと思います。いっぱいいますけどね、僕ら以外も。
――配信への抵抗はないとおっしゃってましたが、最初から特になかったですか?
賢司:ないよね?
要司:ない。なんにもないですね。
賢司:配信で見てくれる人がいるんだったら、それがライブハウスの助けになるんだったらやります。しかも配信代安くしなかったし。チケット代と同じ。高くすれば良かったなと思いましたけどね。
――そんな情勢を通してライブへの向き合い方の変化とかってありました?
要司:向き合い方とか考えたことがないかもしれない。お客さんが可哀そうだなっていう。歌いたいんだろうなみたいな。
賢司:そうだね。可哀そうだなあって。でも多少は変化もあると思いますけどね、無意識のなかでは。でも意識レベルまで出てきちゃうくらい感じていることはないですね。
――お客さん側が声出せないっていうのは、ステージ上から見ていて気になったこともありました?
要司:気になるとかではないかな。別にそれで演奏が変わるとかもないし。声出したいんだろうなって思うだけ。
賢司:例えばコロナと関係なくて、お客さんがいるけど全然無反応であればこっちも「えっ…?」てなるけど、多少は。でもしょうがないから。うちらのお客さん騒がないし、物販してもすぐ帰るし、最高だなって。偉いなって思ってます。
要司:みんな大好きだよ。
賢司:大好きだよ。聞き分けがいい人が多い。
――事務所設立の際のインタビューで、要司さんが「デビューしたときはどうでもいいと思っていたけど、今は自分の思っていることを知ってほしい気持ちもある」とお話されていたと思うんです。その気持ちの変化は今はどうですか?
要司:覚えてないなあ。そういう気持ちだったんだろうなあ。
賢司:(笑)
要司:でもその気持ちはより出てきたなって。共感というよりは分かってくれよみたいな感じ。分かんなかったらしょうがないけどさっていう気持ちですかね。
賢司:マスクで顔見えないっていうのもあるし声出せないのもあるし、なんかお客さんもずっと縮こまってるんですよ。そういうのもあるのかな、俺は前まで自分が勝手にやってて、「見に来てくれてありがとう」みたいな、「俺はこういう者ですよろしく」みたいな感じでやってたんですけど、今はコロナのせいか乗らせてあげたいというか、乗ってほしいというか。「ここにおいで!」みたいな気分でやってるかな。
要司:でもそういうのをわざわざ言わないようになったかな。俺らが楽しい格好いいライブやってればいいっていうか。そりゃあこっちが楽しくなかったら見てる方も楽しくないし。つまんないなって思いながらやっててすごい人気がある人もいるかもしれませんけどね?
賢司:いるよな。
要司:我々はみなさんを楽しませたいなと。僕らも両方楽しめればいいよねっていう。
――ちなみに、おふたりにとってファンってどういう存在なんですか?
賢司:難しいですね。
要司:めちゃくちゃ難しいですね。でもいないとできない。活動はできるけど、それは別に俺たちがやりたいことではないので。極めて重要な存在ではある。
賢司:全員のことは知らないし、友達でもないし名前も知らない人の方が多いし。仲間でもなんでもないんだけど、でも超重要。下手したら親とか彼女とか友達とか家族と同じくらい大切かもしれない。わけわかんない人はさ、仲間って言ったり兄弟って言ったりいろいろ言うけど。
要司:別に仲間作りたくてやってるわけでもないし、家族作りたくてやってるわけでもないから。
賢司:でも利害関係は一致しているわけじゃないですか。向こうはかっけえ曲聴きたいしライブ見たい、俺はかっけえ曲とライブをやりたい。
要司:だから自分も音楽聴いてて好きなバンドもいっぱいいるけど、そういう気持ちでいいんじゃないのって思いますよね。かっけえものを聴きたくてライブに行って、かっこよかったって帰るって。
――先のトピックとしては、10月から下北沢CLUB251にてマンスリーライブが行われます。こちらの意気込みはいかがですか?
要司:意気込みとか特別ないですね。まあ一番ライブしているライブハウスだから、ライブハウスと俺らの一体感みたいなのは他のライブよりは感じることができるのかな。今年251で全然やってないけど。
賢司:言霊ってすごいよね、去年の年末言ったんだよ、「来年はもうあんまり出たくないです」って。251しか出ないような環境ではなく、全国各地行けるようになるといいなっていう思いを込めて言ったら、本当に俺らも地方公演が入って251ワンマンできなかったっていう。
要司:いろんなところでできるようになったからそっちの方がいいんだけどね。
賢司:トピックといったらワンマンなのに「意気込みはない」って。(笑) でも久しぶりに251でワンマンできるので、すごい楽しみです。MCで他のバンドの悪口をいっぱい言うので見に来てください。
要司:今ももう言ってるけどね。
賢司:あとレコーディングも終わってるので。いつ出そうか。
要司:リリースがまったく決められない。決めようと思えば決められるけど。
賢司:のんびりしているので。(笑) 俺らくらいゆるい人って絶滅したのかな。若さとか美貌とかが元々取り柄じゃないので、あんまり気にしないでゆっくりやっちゃいますね。
――今後の展望などはありますか?
賢司:俺あるよ。
要司:なに?
賢司:武道館。今までどこでやりたいとか思ったことなくて、事務所にいたときはマネージャーから怒られてたんですよ。具体的な夢がないと逆算して考えられないからって。だけど最近ライブをやってて、今の感じがすごく良くて。MCもすごくウケるようになってきたので、これ武道館で何千人の前でウケたらすごいぞって。
要司:お笑い芸人の発想なんだよ、それは。(笑)
賢司:でもさ、お笑い芸人って武道館でやりたいと思う人全然いないと思わない?テレビ出たいとかじゃん。番組のMCになりたいとか。武道館で1万人の人を笑わせたいって多分思ってないよ、そんなに。
要司:1万人笑わないよー?
賢司:いやいや、笑うでしょ。だからそれができたらすごい楽しいなって。
要司:MCの話じゃん。
賢司:ライブ全部含むよ。でも今の感じがすごい好きで、このライブはなんかすごい沢山の人に見てもらいたいなって気持ちが芽生えました。
要司:俺は会場がどうとかっていうのはないですね。ロックバンドっていいライブしていい曲を作っていいライブしてCD作っての繰り返しだと思ってるので。それが結果的に今兄貴が言ったようなことになればそれはそれで楽しいなと思います。良い曲作っていろんな楽しいライブができるようになればいいなと。
賢司:逆算しないと。
要司:逆算?還暦くらいにする?目標。
賢司:還暦で武道館?すぐ来るぞ、還暦なんて。
要司:(笑) まあそんな感じですね。
<INTERVIEW:村上麗奈/PHOTO:大参久人>
Large House Satisfaction
MONTHLY ONE MAN LIVE
2022年10月7日(金)
2022年11月4日(金)
2022年12月22日(木)
東京・下北沢CLUB251
OPEN / 19:00 START / 19:30 ADV. ¥3,300