ジャズやフュージョン、R&Bをルーツに持ったメンバーが集まり2019年に結成、下北沢や渋谷を中心に活動している6人組バンドの7BULL。普段はそれぞれサポートミュージシャンやソロアーティストとしての活動もしているという彼らが、なぜ7BULLというひとつのバンドとして活動を始めたのか。メジャーシーンで活躍する各々の楽器遍歴についても触れながら、バンド形態の醍醐味や魅力について話を訊いた。
――ソロの活動も活発なみなさんですが、まずはそれぞれの楽器を始めたきっかけについて教えてください。
山本修也(Ba):僕の場合は父が趣味で音楽をやってて。僕はその影響でずっとピアノをやってたりしていて、9歳からベースを始めました。父が自分のバンドで練習しようってYoutubeの動画を観ていたときに僕も観てたら、今まではピアノしかやってなかったのにすごいベースの音が聴こえてきて。格好いいってなっちゃって、もう夢中になったっていう感じです。
――影響を受けたプレーヤーなどはいるんですか?
山本:ピノ・パラディーノっていう人がいて。ジョン・メイヤーとかやってる人なんですけど、すごいシンプルなことやりつつ、ベースとしての仕事をちゃんとしているのでその人にはすごい影響を受けています。
谷口友朗(Tp):僕は家族は音楽をやってなかったんですけど、音楽を聴くのは好きだったらしくて。小さいころから東京スカパラダイスオーケストラとかが車の中で流れたりしていて、それをずっと聴いているうちに楽器やりたいなって思ったんです。それでなにやるかっていう時に、スカパラの中でも格好いいのがトランペットだなと思って。気付いたら握ってましたね。習ったときの先生がジャズをやられている先生だったので、始まりはジャズっていう感じでした。
直井弦太(Dr):僕は3歳からドラムやってるんですけど、父親と母親が音楽好きで、家にもめっちゃ楽器がある環境なんですよ。うちの父親が元々ドラムをやっていて、母親が鍵盤だったりをやっていて、僕がベースをやればピアノトリオができるよねっていうので僕の名前に弦太ってつけたんですけど、僕は全然裏切ってドラムの方にいきましたね。(笑) 家でよく流れていたのはそれこそジャズが多くて、最初に僕が始めたジャンルもジャズとかフュージョンが最初でした。
美咲ミサ(Vo):私は親が音楽やってて、母が三味線で父がサックスっていう、ちょっと異色なんですけど。
安尾渉(A.Sax/Fl):え、初めて知った。
美咲:父は今は板前なんですけど。
――ええ!?
美咲:そうなんです。(笑) なので家では小さいころからジャズと古典邦楽が流れているみたいな。私自身は小さいころからEXILEとかも好きだったので、歌って踊れるようなアーティストが目標で歌とかダンスを習っていたんですけど、いつの間にかよりソウルとかブラックミュージックとかが好きになって、いつの間にかバンド組んでたっていう感じです。
――安尾さんはいかがですか?
安尾:親父がピアノのミュージシャンやってて。その影響でジャズとかシティポップとか聴いていて。音楽は好きだったんですけど、小中ずっとサッカー部で。大学からサックスやったらモテるかなって初めて、今に至るっていう感じですね。
直井:あっさり。(笑)
安尾:影響を受けている人はサンダーキャットです。
谷口:ベーシストじゃん。
安尾:あとはモノネオンっていう……
一同:だからベーシスト。(笑)
安尾:サックスだと安藤康平さんですね。でもサックスに決めた理由はカーク・ウェイラムっていう人がいて、その人の演奏を聞いてめちゃくちゃ音色いいなと思ったからでした。
工藤寛丈(Key):自分は親が2人とも歌をやっていて、習い事として音楽を習わせようっていうのが親の方針だったので、気付いたらヤマハに通っていて。そこで5歳くらいからエレクトーンをずっとやっていたんです。そこではフュージョンとかジャズをやってたんですけど、高校までそれを続けてきて、大学になるときにピアノとかもやろうと思って、ピアノとかキーボードとかに取り組むようになったっていう感じですね。僕はハービー・ハンコックとかロバート・グラスパーとかに影響を受けてるなと思います。
電話して20秒でバンドやるって言ったから。
――そんなみなさんはどこで出会ってバンドを組もうという風になったんですか?
直井:下北沢だとrpmっていう場所があるんですけど、そういう場所でセッションを通していろんな人と会ったりサポートミュージシャンとして仕事をしているときに、ベースだったら突然修也とブッキングさせられて一緒に演奏することとかが多くて。安尾さんも初めて会った場所はスタジオの仕事だったり。そういうのでみんなと関わっていくうちに、バンドにした方が面白いんじゃないかって思ったんです。スタジオワークをやっているメンバーが集まって下北沢だったり渋谷のライブハウスシーンで出てきたらめっちゃおもろいんじゃないかなと。
ボーカルの美咲は元々ソロで活動していて、そこのバックのドラムが僕だったんですよ。それで年も近かったし絶対女の子ボーカルがいいっていうこだわりがあったし、ソウルとかR&Bに寄っていくだろうなって思ったときに、じゃあ声かけてみようって。メンバーの入れ替えはあったりしたんですけど、最終的にこの形に落ち着いたっていう感じですね。
――女性ボーカルがいいっていうのはなにか理由が?
直井:男性ボーカルのR&Bもすごく好きなんですけど、聴いていて一番楽しいなって思うのが女性ボーカルのR&Bだったり、歌姫みたいなイメージが強くて。あとは単純に男だけの考え方っていうのが男臭くなりすぎてプロモーションとかも難しいし、女の子の感性があるとバンドもちょっと彩りがあるのかなっていうのもありましたね。
――みなさんはバンドとして活動しようってなったときに、どう思いました?
美咲:気になる。
直井:安尾さんはいいよ。安尾さんは電話して20秒でバンドやるって言ったから。
安尾:何も聞かずにいいよって言ったね。工藤ちゃんは?
美咲:一番イレギュラーだよね。途中で入ってるから。
工藤:そうなんですよ。最初はサポートキーボードとしてライブに参加していて、自分の中では貴重な経験として、嬉しかったな、これで終わりかなみたいな気持ちだったんです。そうしたら弦太さんから電話があって、入ってくれって言われて。めちゃくちゃ嬉しかったですね。
直井:でも工藤だけ唯一、僕が最初から面識がなかった。工藤は修也と高校の同級生だったんですよ。
――じゃあ最初は音楽繋がりではなかったんですね。
山本:そうですね。クラスメイトでした。
――ちなみに工藤さんは7BULLに加入する前はこのバンドにどんな印象を抱いてました?
美咲:言ってやれ。(笑)
工藤:Youtubeに挙がっている動画を見ていて、めちゃくちゃハイレベルな音楽だったので、これはちょっとやばいぞっていう気持ちで臨んでましたね。
――美咲さんはいかがですか?
美咲:直井に度々ライブに出てもらったり、私のコンテスト系にも出てもらって、段々仲良くなってきたかなっていうときにいきなり連絡があって。私としてはずっとソロの活動はしていたんですけど、バンドを組むとか今まで考えたことなかったんです。でも少しずつサポートメンバーの方とバンド感が感じられるようになってきた頃だったので、これはやるしかないと思って。割と即決でした。
谷口:僕はサポートミュージシャンとして基本的に活動しているんですけど、そこではやっぱりベテランの方がいらっしゃったりして、大体自分が一番年下みたいな感じなので、気を遣ったりもするんです。なので同世代で自分のやりたいことをやるっていう環境がすごく欲しかった時期もあったりして、そんなときに声かけてもらって。やっぱり音楽的なところでも人間的なところでもすごく尊敬できる仲間たちなので、僕の今の心の支えにもなっているし、すごい楽しいなって思いますね。
山本:僕はお話をいただいたときは高校生だったんですね。当時から一応ちゃんと音楽活動はしていて、でもみんな大人だから僕はいかに子供っぽくなく見せられるかみたいなことをずっと悩んでいたときに弦ちゃんから電話かかってきて。高校生の僕を引き抜いてくれたっていうことにまず感動しました。そのときの感情が割と今でも続いてるから未だにふわふわした感じでやってるけど、いちメンバーとして作り上げたいって思って。楽しくできてるっていう感じです。
――この楽器編成は最初からイメージされていたんですか?
直井:そうですね。R&Bをやるのはもちろんサックスやトランペットがない編成も多いんですけど、R&Bだけをやりたいわけではなくて、シティポップだったり90年代80年代のようなサウンドメイクとかもしたいし、すごく最近のハイブリッドなサウンドもやりたいってなったときに、ホーンセクションってすごく重要なピースだと思っていて。セクションでも動けるし、ボーカルのメロディがある上でのオブリガードでも雰囲気を作れるし。あとは唯一無二になれるなっていうのは思いましたね。
――それぞれ個人での活動も盛んですが、決まったメンバーでグループとして活動する魅力ってなんですか?
直井:修也さん最近特にお忙しいですけど、どうですか?
山本:やっぱチームだから安心感はありえないほどありますね。それに7BULLのライブを楽しいって思えているしリハも楽しいと思えるし、だから良いものが作れるしっていう、居心地のよさとみんなで同じものを作っていけるっていうマインドが他の現場とは違う安心感があるなって思います。
直井:比較的7BULLの中でバンド活動が多いのが安尾さんで。もう1個バンドやっているんですけど、安尾さんはどうですか?バンドのよさ。
安尾:どうやろうね。2つバンドやっていてそれぞれいい点があって。でもやっぱバンドの方がなんでも言いやすいんじゃないですか。アレンジにしても構成にしても。
直井:より突き詰められる感はあるよね。
――制作はどういう順序で進めていくことが多いんですか?
直井:いろいろ試行錯誤した結果にはなるんですけど、僕と安尾さんが「こういう感じの曲欲しくない?」っていう話をするのから始まるんですよ。今あるセトリだったり最近影響を受けたものから、こういうの作りたくない?って言って安尾さんは自分で曲を作るんですけど、それがパソコンでやるDAWじゃなくて、iPhoneの小さい画面で作るんですよ。GarageBandで。
――器用ですね。
安尾:それを聴いてもらって、みんなにアレンジしてもらうっていう。あと今は修也が作ることも多いですね。
直井:僕がこういうのが欲しいってアーティスト3人くらい修也に言って、その3人のいいところを混ぜて作ってっていう。そうすると結構いいものが返ってくる。
美咲:納品じゃん。(笑)
――山本さん、そのリクエストからどういう風に調理していくんですか?
山本:いつも言わんとしていることはすごい分かるんですよ。聴いてきた音楽も被っているところがあったりして、「確かに足りてないな、こういう曲」っていうのがあったりとか、普段からこの人のライブ格好良いよねっていう話もするので。もう勘で、ここかなみたいなのを引っ張ってきて提出してますね。でもちゃんと、ここはもっとこうしようみたいなことも言ってくれるから勉強になります。昔よりは制作のスピードも早くなってるのかなって思ったりもしますね。
直井:めっちゃ早いよ。思いついたらとりあえず1曲フル尺でできてるし。
――美咲さんはそこに歌詞も乗せていく?
美咲:そうですね。でも大体スタジオに入ると変わるんですよ。安尾さんがメロディと歌詞にうるさくて。ぎりぎりまで仮歌詞とか仮メロで作っていって、最後にこれだってなってから歌詞も考え直してみたいな。だからいつもリハは雑な歌詞で歌ってます。
――安尾さんはメロディや歌詞にこだわりがあるんですか?
安尾:歌詞に関してはそこまで言わないんですけど、メロディに関しては結構言っていて。でも言ったら結構すぐにこういう感じねって歌ってくれるので、そこはありがとうございます……。
――この体制と音楽性で下北などのライブハウスに行くのは、シーンの変化みたいなのも狙っていたりするんですか?
直井:僕はそうかもしれないですね。僕は高校生からずっと下北に出入りしていて。元々バンドサポートもやっていたんですけど、そのときは下北のありとあらゆるライブハウスに月9とかで出ていたんです。そうするとやっぱり出演者とかも似るじゃないですか。そうなったときに、そこの対バンにひとついるだけで火種になるみたいなのを狙えるなと思ってますね。
――下北沢のライブハウスに出たから気付いたことや受けた刺激はどんなものがありますか?
美咲:パフォーマンスとかじゃない?
直井:ステージングだよね。タフさ。音楽的に難しいこととかっていうよりは、歌詞の説得力とかですかね。自分たちはこういうことを思っていてこういうことを伝えたいんだっていう熱量の強さは半端じゃない。観てて最高だなって思うし、ビビりがないというか。僕らは音楽的なことをすごく最初に考えるけど、どっちかというとそれはスタジオワーク思考じゃないですか。バンドの人たちって、俺だったら絶対その位置でクラッシュ叩かんわっていうところで本気で振り被って叩いたりするんですけど、でも超かっこいいみたいな。そのパッションが最優先されるっていうのはバンドの良さだし、そういう風になりたいなとか思ったりしますけどね。
――このバンドで演奏するにあたってこだわっていることを教えてください。
工藤:修也くんの作るデモがすごい凝ったシンセサウンドというか、変わったシンセなんですよ。なのでそういう音をちゃんと妥協しないで作るっていうのはありますね。
安尾:自分はホーンセクションを作るんですけど、どうやってボーカルを食おうかっていう。
美咲:本当にその通りで、他のバンドだったら多分ボーカルの歌を聴かせるためにみたいなところがあると思うんですけど、それが本当になくて。いかに負けないように戦うかっていう感じなんですよ。最初の方とか本当にそれで悩んでいて。パフォーマンスとか歌い方とか抜ける声の出し方とか、少しずつっていう感じですね。
直井:ドラムだけで言うと、お洒落なこととかR&Bとかソウルをやってるけど、僕は元々ロックが大好きで。R&Bが叩ける人が7BULLのドラムを叩くとR&Bになるんですけど、僕が叩くとロック&R&Bになるんですよ。それになりたいなっていうのは意識していますね。
谷口:僕は意識するっていうか、安尾さんが作ったホーンセクションが見たことない音使いとかリズムとかで送られてくるので、それがすごく難しいけど頑張ってるっていう感じですかね。
安尾:自分譜面が読めないので、譜面を共有せずに音だけ送ってるんですよ。
直井:中々ないよ、ホーンセクションで耳コピしなきゃなんて。
安尾:友朗じゃなかったら怒られてますね。
山本:ベースのプレイとかフレーズを作る上では他の人がやらないような、例えばリリースの音をどのくらい伸ばすかとか、音を遅れて入れるとか逆にプッシュして入るかみたいなのは、他の人があんまりやらないようなところを攻めていったりとかしていますね。いかんせんみんな上手すぎるので、自由にできる隙間をすごい作ってくれるから特殊なことをやろうかなっていう思考になれますね。
チーズ牛丼食ってるときに「あ!」ってなりたい。
――グループとしての目標はありますか?
谷口:俺は夏のフェスに出たい。
直井:これは満場一致ですね。出たい。
美咲:サーキットとかもね。でもなんか誘われないんですよ、イベントとかも。
直井:最近声かけてもらえるようになってきたよね、こっちから営業して。記事を見たライブハウス関係者は是非誘っていただいて……(笑)
――個人としての目標はいかがでしょう?個人的な仕事に関するものでも、7BULLの一員としてでも。
山本:個人で言うと東京事変の亀田誠治さんがすごく好きなので、ゆくゆくはプロデューサーだったり編曲、アレンジとかもプロフィールにちゃんと書けるくらいの活動はしたいですね。あとはバンドとしてだと、例えば僕の高校時代の友達が、僕にいちいち言わなくてもライブに来てくれるみたいな、そのくらいの存在にはなりたいなって思っています。
谷口:僕は18歳のときに上京してきたんですけど、上京する前に神社で絵馬に書いたんですよ。超シンプルなんですけど、「最強になりたい」って。僕はもうそれですね。あとバンドではいずれ知名度が上がるにつれて、管楽器がいても特殊と思われないようになりたくて。例えばOfficial髭男dismもすごい管楽器取り入れて格好いいじゃないですか。そういうのが増えて、より管楽器が目立つのが夢かなって思いますね。
直井:個人としては、スタジオワークの仕事とか、僕もバンド2つやってるんですけど、常日頃5人くらいいるんじゃないかって思われていたいですね。
美咲:ああ、忙しくて?
直井:たまにあるじゃん、「お前3人くらいいるでしょ」みたいな。それを5人くらいにしたいですね。そのくらいスタジオワークで求められるようになりたいし、僕がいないと回らないっていう音楽業界にしたいですね。バンドとしては、僕の家の近くにすき家があるんですけど、すき家で流れてほしい。チーズ牛丼食ってるときに「あ!」ってなりたい。街中で聴きたいですね。
美咲:確かに街中で聴きたいね。私もソロでアーティスト活動もやってるんですけど、7BULLをやっていることによってソロ活動でやりたいことも見えてきて。7BULLでできないようなダンスミュージックとかハウスとかもできるように今勉強しているんですけど、自分でトラックメイクもできるようなシンガーソングライターを目指していきたいっていうのがソロの目標です。バンドでは、私はテレビっ子なのでテレビの音楽番組に出たいのもそうですけど、「しゃべくり007」に出たいですね。ちゃんとみんな面白いので、トーク番組がいきるかなって。仲の良さとか人間的に面白いところも見てもらえるように、そういうところに需要を持ってもらえるくらい有名にはなりたいですね。
安尾:個人的にはサンダーキャットになりたくて。
直井:だから楽器変えるじゃん。(笑)
安尾:サンダーキャットってベーシストっていうよりもアーティストじゃないですか。そういうところが格好いいなと思うんですよね。バンドで言うと、サントリーホールに憧れてて、そこでバンドやりたいなって。あと自分が沖縄出身なんですけど、いずれみんなで沖縄でできたらなって思いますね。
工藤:僕はスタジオワークはメインでやってるっていうほどではないんですけど、その仕事を増やしていく中でアンサンブルをする上で欠かせないような存在になりたくて。それこそ7BULLやってる中でもリハも本番も勉強させてもらってるんですけど、アンサンブル力をもっと高めていきたいっていうのはあります。あとはバンドとしては、7BULLらしさをずっとキープしながら続けていけたら僕はそれだけで嬉しいですね。
直井:小さい幸せを長く続けたいパターンね。
美咲:素晴らしい。
<INTERVIEW:村上麗奈>
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