[PREDAWN]さめざめ・笛田サオリ、3年ぶりフルアルバムを語る 〜WEB完全版〜

2022年に”きみが死ぬとき思い出す女の子になりたい”がTikTokで話題となったさめざめ。そのリマスターを含めた13曲が収録された3年ぶりのアルバム『ガールズ in the 躁鬱』が3月22日にリリースされた。これまで以上にバラエティに富んだ楽曲の制作について、笛田サオリに話を訊いた。

――2022年、”きみが死ぬとき思い出す女の子になりたい”がTikTokで話題になりました。それを知ったとき、どう感じました?

笛田:友達からバズってると聞いて知ったんです。バズってると言っても一瞬盛り上がってるくらいだと思っていたんですけど、どんどん投稿数が増えて。今までさめざめを知らなかった方がたくさん知ってくれる機会になったので、とても嬉しいですね。6年前の曲がこんな形でバズると思わなかったのでびっくりしました。

――バズったことで変化もありましたか?

笛田:TikTokがバズったことで、分かりやすくYouTubeの再生回数が増えました。YouTubeでは自分のチャンネルの解析もできるんですが、95%が17歳から20代くらいの層になったんです。自分で作っておいてですけど「女子高生がこれ聞いていいの?」みたいな気持ちになりました。(笑) でも”きみが死ぬとき思い出す女の子になりたい”を作っていた当時から、若い世代の女の子に聴いてほしいと思ってはいたので。6年越しにそういう状況になるとは思わなかったです。

――2020年からは「バナナとドーナッツ」を率いるかたちでバンド編成での動きが本格化しています。活動形態を変化させるきっかけとなった出来事があったんですか?

笛田:元々は私1人がさめざめとして活動している上でサポートメンバーという形でバンド活動をしていた んです。2019年に渋谷WWWでワンマンライブをしたんですけど、その直前のタイミングで長くやってくれていたサポートメンバーが抜けちゃって。サポートでも出来るだけスタジオに入って一緒に音を作りたいなと思い、それで一緒に音を楽しむ仲間をゼロから見つけたいなと思ったんですね。元々ディレクターだった ハイパーむぅたんが「俺がベースを弾くからバンドメンバーを集めよう」と言ってくれて、メンバーを集 めたのがきっかけでした。今までやっていた形とは変わってしまうので、試みとしては結構なチャレンジ だったと思います。でもどんなバンドになるのかという楽しみな気持ちが強かったですね。

――メンバー選びではどんなことを重視しましたか?

笛田:技術はもちろん、人となりで選びました。バンドって、人間関係がうまく合わないとどうしても長く続けられないんです。お互いが信頼できる人じゃないと難しい。まずはディレクターであるハイパーむぅたんは既に信頼していたので、ハイパーむぅたんが信頼しているドラムを連れてきてもらったんです。そこでデンジャラスまいまいが来たんですけど、まいまいとは既に顔見知りで。それでまいまいにいいギタリストがいないか聞いて、スーパーさったんが来てくれて。そうやってバンドメンバーが一緒に演奏したいと思う人を一人ずつ連れてきてくれて集まったんです。ただキーボードの子だけはちょっと特殊で。1年前に「さめざめのコピーバンドをやるからライブに来てください」と連絡してくれたファンの子がいたんですけど、そのコピーバンドにいたキーボードの子を誘ったんです。ライブを観に行ったときに、この子はさめざめの曲をキーボードでも再現できるし、何よりコーラスが合いそうだなと思って。そうやって今のバンドメンバーが揃いました。

――バンド編成として新たに踏み出してからの手ごたえはいかがですか?

笛田:結成したのが2020年でコロナ禍に入ったときだったので、ライブがあまりできない時期だったんです。ただ私は絶対に制作を続けたかったので、みんなにスタジオに集まってもらって、淡々と制作を進めながら下北沢CLUB251で配信ライブをさせてもらっていました。通常のバンド活動とはちょっと違う始まり方だったんですけど、その半年後くらいにやっとお客さんを入れてライブができるようになって。緊急事態という特別な時期を共有できたこともあって、お客さんの前でライブできる幸せをみんなで噛み締められたかなと思っています。

――バンド編成になってから曲作りの変化もありましたか?

笛田:そうですね。私自身、コンセプトありきで曲を作ることが多いんですけど、今はディレクターでもあるハイパーむぅたんが「こういう曲ってさめざめにないよね」とか「こういう曲欲しい」みたいな提案をしてくれて、そこから曲を作ることもあって。バンドメンバーの声を聞きつつ曲を作れるようになったのはバナナとドーナッツになってからできたことかなと思います。

――今作『ガールズ in the 躁鬱』は3年ぶりのフルアルバムです。サウンド面でもすごく多彩な作品だと感じましたが、曲作りはどのように進んだんですか?

笛田:ある程度アレンジのイメージが固まってからメンバーにデモを渡すので、それまでは私が自分の世界の中で曲を作っていくんです。例えば”マッチングッドラブ”は私がマッチングアプリを使った経験をもとに作っていて。このご時世、マッチングアプリを使ったことがある人は多いじゃないですか。今の恋愛の必須アイテムなのに、それで曲を作ったことがないなと思って。コンセプトを決めたあとは、マッチングアプリの曲がないか検索をするんです。似た曲は作りたくないので。そうしたらマッチングアプリで失敗した曲とかマイナス要素の曲はあったので、逆にマッチングアプリを楽しんでるような曲を作ることにして。あとは曲の欠片がひらめいたら、そこから広げるといった作り方でした。

――調べるところから始まるんですね。

笛田:そうなんです。でも明るくて楽しい曲はマッチングアプリのどんどんスワイプしていくイメージにも重なるとも思ったんです。マッチングアプリを使いながら聴けるような、ラフで重くない曲にしたいなと。

――”キスのサブスク”もユニークなテーマですよね。

笛田:これもタイトルに「サブスク」を使ってる人がいないかリサーチするところからでした。今っていろんなサブスクがあるじゃないですか。その中でどんなサブスクがあったらいいかなと考えてみて、好きな人とキスをし続けられるサブスクがあったら最高だな、みたいな。(笑) サブスクって1ヶ月無料のお試しだけでやめちゃう人も多いですけど、そういうサブスクのあるあるネタみたいなのも入れつつ、さめざめっぽい恋愛要素も取り入れつつ作った曲です。

――「サブスクあるある」という意味でも楽しめる歌詞ですよね。さめざめの歌詞は1人の女の子が主人公になっているものが多いと思いますが、人物像を固めてから書いているんですか?

笛田:人物像というか、私のドキュメンタリー物語なんです。自分の恋愛の話を落とし込んでいて、13曲中10曲が同じ相手の歌みたいな。(笑) 1人の好きな人で何曲作れるかっていう、自分の中のテーマがあるんですよね。100曲作れたらいいかな。(笑)

――ひとつの恋愛をすごく細かく切り刻んでいく感じなんですか?

笛田:そうです。ロースハムをどれぐらい薄切りにできるか、何枚食べれるかみたいな気持ちで作ってます。(笑) 例えば”会えなくなってもきみに会いたいよ。”という曲は、好きな人と別れた後に、好きな人とよく行っていたファミリーマートに1人で行く話なんですけど、それも家から出てファミリーマートでファミチキを買って帰ってくるまでの10分とか15分の話なんですね。本当にちょっとした1分、1時間、1週間とかの話を曲にするとたくさん曲ができるんです。(笑)

――ご自身が恋愛しているとき、何かあったら「これ曲にしよう!」と思うんですか?

笛田:思います。「ネタだ!」みたいな。(笑) デートしているときも、「この情景綺麗だから忘れたくないな」と思ったり、言われた言葉をそのまま曲に使うこともあります。そっちの方がリアルですし、生々しいものの方が共感してくれる人も多いので。

――”26.5cm。”も小説のような没入感があるリアルな歌詞ですよね。

笛田:26.5cmって、日本人男性で一番多い靴のサイズらしいんです。でも皆さん結構サバ読むんですよね。身長も、168、9cmの人が170cmとかって言うじゃないですか。靴のサイズも同じで、本当は27cmと言ってても26.5cmしかないとかよくあるんです。(笑) 4、5年くらい前から”26.5cm。”という曲を作ろうと決めてたんですけど、私が当時好きだった人が、「27cmかな」と言いつついつも26.5cmの靴を履いてる人だったんですね。私は好きな人がいるとスニーカーをあげる癖があるんですけど、その人にも計4足くらいスニーカーをプレゼントしていて。最後はもう受け取ってもらえない感じになっちゃったんですけど、「靴だけでも受け取ってください!」みたいな。(笑) 私はすごく会いたかったけど、その人は靴も受け取りたくないんだなと思って。その恋愛が終わってから、「いつかお互いを忘れていくけど、たまにはあなたのことを思い出すよ」みたいな感じで、やっと終焉を迎えた曲なんです。

――壮大ですね。”東京片思い物語”から”洗脳B”、”くそったれディスコ”、”生まれてきた意味なんてなくても”の曲順はすごく抑揚があって聴きごたえがありました。

笛田:それ、ラジオパーソナリティをやってる芸人のグランジ遠山くんも同じこと言ってました。知り合いのタレントさんとか芸人さん、音楽関連の人にアルバムのコメントをもらったんですけど、遠山くんが「この流れがすごくいいから、最後まで聴く前にとりあえずそれだけ伝える」と言っていて。

――そうだったんですね。曲順にもこだわりがありますか?

笛田:曲順はある程度土台を作った上でディレクターに相談したんですけど、”東京片思い物語”がアコギ1本で寂しい曲なので、真ん中くらいに入れたいなと思っていて。”洗脳B”はさめざめの中でもちょっと変態なアレンジで空気を変えてくれるような曲なので、ちょうどシフトチェンジをするのに利用しやすいんですよね。なのでその2曲を並べました。曲順も曲間の秒数もすごくこだわっているので、曲順を気に入っていただけるのは嬉しいです。

――”あいまいみー”は歌詞に「イヤホン」や「Bluetooth」など身近な言葉があってポップな印象の曲ですね。

笛田:私自身、本当によくイヤホンの片方だけ充電を切らしたりするんです。(笑) そういう経験を元に作った曲ではあるんですけど、2020年に作った曲なのでコロナ禍で部屋の中で悶々と孤独と戦っているときの曲でもあるんです。言霊じゃないですけど、明るいものを作らないと気が滅入ってしまうと思ってできた曲です。

――コロナ禍の期間はやはり制作にも大きい影響がありましたか?

笛田:大ありでしたね。人と会ったり経験をするという意味でのインプットがすごく少なかったので、それこそ恋愛経験も少なかった時期だったと思うんです。ただバンドメンバーがいたことで新しいアイデアをもらったり、今までの自分のストックから持ってきたりコンセプトありきの曲を作ったりしていました。そういう部分では結構苦しみながら作った楽曲たちだと思います。

――それまで恋愛の経験を蓄積しつつ作っていたものが、その蓄積ができなくなったことで他の部分からのアウトプットが増えたと。

笛田:貯金を切り崩すみたいな。(笑) そうなったからこそ”洗脳B”のような、恋愛というよりは生きるか死ぬかという感じの曲ができたのかなとも思います。

――最後に、目標や展望を教えてください。

笛田:元々さめざめを始めたきっかけは、女の子のためだったんです。女の子のファンが欲しくて、女の子から好かれればいいみたいな気持ちで始めたんですね。男性ファンからすればブーイングだと思うんですけど。(笑) もちろん今ライブに来てくださってる方は男性も女性もいらっしゃいますし、みなさん来てくれて嬉しいんですけど、これからも女性のファンの方が共感してくれるような楽曲やイベントをしていくのはモットーにしたいと思っています。あとは今回のアルバムで音楽の幅が広がったので、音楽的な成長もしていきたいなと思っています。

written by 村上麗奈


Release

「ガールズin the躁鬱」
2023年3月22日全国リリース

1.HOTELバナナとドーナッツ
2.きみが死ぬとき思い出す女の子になりたい
3.二番目のピンク
4.マッチングッドラブ
5.キスのサブスク
6.東京片想い物語
7.洗脳B
8.くそったれディスコ
9.生まれてきた意味なんてなくても
10.会えなくなってもきみに会いたいよ。
11.あいまいみー
12.ラヴ!!絶好調DEATH
13.26.5cm

https://samezame.theshop.jp/items/73101693

Profile

さめざめ

笛田サオリによるソロプロジェクト
女の子のいえない本音を包み隠さず書き下ろした楽曲がネットで反響を呼び、10代~20代の女性を中心に支持を獲得。
刺激的なインパクトとは裏腹に、共感性溢れる歌詞に、”さめざめ推し”のリスナー、アーティスト、音楽関係者が急増中!


オフィシャルサイト http://samezame-official.com


Live Schedule

2023年5月21日(日)下北沢BAR?CCO
さめざめ女子限定ワンマン〜リクエスト女子会〜
2023年6月18日(日)下北沢BAR?CCO
さめざめ女子限定ワンマン〜ただひたすら泣く女子会〜
2023年7月23日(日)下北沢BAR?CCO
さめざめ女子限定ワンマン〜スナックさめざめ〜
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