「2月」“440 presents uchuu in the four forty”の仲間たち。今、この時、この季節を思いのまま綴ってくれます。

“440 presents uchuu in the four forty”の仲間たち。今、この時、この季節を思いのまま綴ってくれます。

過ぎゆく日々に、チョコレートを。

「2月といえば」。お風呂に浸かり、温かい湯気に包まれて、私はそれについて考えている。思考を巡らすこと10分、びっくりするほどに何も思い浮かばない。ぼんやり考え30分、しだいに2月にやらねばならぬタスクたちが脳内を埋め尽くし始める。

私は夕食のうどんをポコポコ茹で始めた。白い麺がふっくらふくらむ。うどんをすすりその優しさに舌を喜ばせた瞬間、「2月」が頭によぎった。チョコレート。ああ、「2月」はバレンタインだ……。お風呂でスタートした「2月」について、気づけば1時間以上考えていた。

バレンタインをすぐに思いつかなかった自分に悲しくなる。友達と手作りチョコの交換していた昔の自分に思い馳せてみた。板チョコを溶かしてカップに入れただけの、とても簡単な手作りチョコ。リボンの色にこだわって1つ1つ丁寧に包装し、最後に小さなお手紙を添える。あんなに楽しく過ごしていたイベントは、今や頭のすみっこ、1番下の引き出しの1番奥あたりに収納されていた。

「バレンタイン」は商業的に作られた戦略だとか、恋のチャンスだとか、色々な意味づけがあるのだろうが、幼き「私」がチョコを作り心躍らせていたことは、間違いない。ドタバタとあっけない毎日、逃げるようにしてすぎる日々に呑まれ揉まれて、それは遠い感情になり、危うく思い出せなくなるところだった。たいていの季節というものは、忘れることは容易いが思い出すことは難しい。

2月は冬と春をつなぐ。あっという間に過ぎてゆく日々が、さらにあっという間に過ぎてゆく。走り抜けることも大切だ、でも、その途中に大事な落とし物をしないようにしたい。チョコレートという落とし物を拾い集めると、無色透明だった2月がチョコレート色染まっていく。さて、今月は板チョコを溶かしてみようかな。

――それはチョコレート。昔は苦くて食べられなかったけれど、今はとっても甘い。

例えば陽の光。年もすっかり明け、 “今年” にも慣れていることにすら慣れてしまった頃の冬の日差しは、いつもよりオレンジ色で温かみがあるように見える。過去と現在と未来をつなぐ季節の機微は、ゆっくり歩かないと、簡単に消えてしまう。

宮野かえで

momostolen のGt.Vo.で、作詞作曲を行う。アコースティックでソロ活動もしている。活動拠点は東京。

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2023年2月6日(火)
440 presents uchuu in the four forty

出演:スズキケント/PHOEBE/三輪風太/兎角舞う/BamBook
TICKET:Livepocket

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