“440 presents uchuu in the four forty”の仲間たち。今、この時、この季節を思いのまま綴ってくれます。
春眠
「おはよう。今朝は自分にしては早起きをして、朝ごはんも食べたけれど、なんとその後二度寝をしてしまったんだ。その最中に、ひどい夢を見てね。なんだか寝た気がしないよ。」
眠たさが残るまま、冷め切ったコーヒーを口に含む。二度寝をする前に淹れてしまったから、酸味が強くなっていておいしくない。
「少し暖かくなったものだから、きっと眠たいんだ。たくさん寝てしまった時、僕はよく後悔してしまそうになるけれど、最近は、たくさん寝てぼーっとするのも意外と悪くない、とも思うようになったよ。歳を取ったのかもしれないね。」
パソコンを広げ、音楽を流す。Ella Fitzgeraldが歌い上げる “But Not for Me” が流れた。世間で流れる愛の歌は自分のためじゃないの、と繊細で芯のある声が響く。僕が1番好きな音楽だ。
「ほとんどのものは、But Not for Meだ。なんてね。」
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「せめて私だけは、あなたのためにいるわ。」
私は自分の言葉で気持ちを発しながら、そっと彼の体に触れた。彼の手も優しくそれに応えてくれる。
朝から彼はとても疲れている様子だった。彼はあまり賢くはないから私の言葉を理解することはできないし、私は不器用だから彼と同じ言葉を発することができない。伝えたくても伝えられない、そんな日々がもどかしく感じる。
彼の話を聞きながら、ふと、先日、彼の書斎で読んだ本の一節を思い出した。
春眠 暁を覚えず
処処 啼鳥を聞く
夜来 風雨の声
花落つること 知んぬ多少ぞ
春の穏やかな眠り。心地よく暁が通り過ぎ、ふと目を覚まして庭の花を慮る。できるのならば、彼のひどい夢を食べてあげたい、と思うけれど、あいにく私はバクではなく猫だった。
ドアの隙間から、昨晩の雨でぬかるんだ地面が見えた。今日は帰るのが遅くなると言っていたし、のんびりと読書の続きでもしよう。彼の帰りを、穏やかに待つことにしよう。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
宮野かえで
momostolen のGt.Vo.で、作詞作曲を行う。アコースティックでソロ活動もしている。活動拠点は東京。
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2023年4月2日(火)
“440 presents uchuu in the four forty”
出演:玉手初美/つじりお/小松夏恋withおすず/谷端奏人(バンドセット)
TICKET:Livepocket
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