「7月」“440 presents uchuu in the four forty”の仲間たち。今、この時、この季節を思いのまま綴ってくれます。

　7月が苦手だ。というか、夏が苦手だ。でも20代も後半になってくると、そう思いたいだけな気もしてくる。「夏が嫌いで冬が好き」な方が、センシティブな感じがするでしょう。しかしそうはいっても、やはり苦手意識みたいなものが10代の頃から私の中にあるのは確かだ。その理由として私がよく思うのは、夏は「物事の輪郭がぼやける」ということ。
　「物事の輪郭がぼやける」というのはだいぶ感覚的な話であるし、実際そういった部分もある。ただ、もう少し考えてみたい。夏は冬に比べると、気温・湿度がともに高いため、空気中に含まれる水蒸気の量が多くなる。光は空気中の水蒸気により散乱するから、水蒸気が多い分明るさが弱まる（理科の授業みたいだ）。加えて、夏と冬では太陽の位置が違うから陽光の届き方も違ってくる。つまり光の質が違うわけだ。私たちの目に見えている世界は、視神経が光によって受け取る脳への信号であるから、光の質が違えば世界の映り方も変わるだろう。それが結果として、私の「ぼやける」という感覚に繋がるのではないか。
　ぼやけることが夏を苦手な理由になるのか、ぼやけることが嫌なのかと聞かれたら、そうでもない気もしてくる。あるいは、そもそも私にある夏への苦手意識が、「ぼやける」という感覚と結びついているのかもしれない。私は夏が苦手で、ぼやけた世界こそが夏なのだ。そして、ぼやけた「もの」たちの世界はやがて、形の持たぬ「こと」の輪郭もぼやけさせていくだろう。水を含んだインクが紙の上で滲むみたいに。7月はその始まりだ。

（写真は、昨年7月にリリースした1stEP “Tides” のジャケット撮影時、「少し私がぼやけた」2枚）

長谷川拓実

1996年生まれ、横浜出身のSSW。2021年より、宅録で制作した楽曲をインターネットに公開し始める。バンドセットや伊賀航とのデュオ、弾き語りでのライブを行う。

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