尾形回帰の突飛なアイデアは、図書館と飲み屋から――インスピレーションに溢れるロックスターが暮らす街・下北沢

HEREの尾形回帰が、バンドセットでのソロ活動を始動したという。ミュージシャンとして20年以上のキャリアを積みながらも日々新しいアイデアを思いつき次々実現していくバイタリティで、たくさんの人を巻き込んできた尾形にとって下北沢は生活の舞台であり、活動のステージでもある。そんな尾形は、何かを期待して下北沢を訪れる人にとって間違いなく、活動の背中を押してくれるアイコンとして欠かせない存在だ。本誌も始動するにあたり、背中を押してほしい!ということで、巻頭インタビューを実施した。

映画好きのバンドマンが集まって、映画館で映画を観る会。打ち上げ付きで定期開催。


――『シモキタアウトゴーイング』創刊ということで、とにかく下北沢を盛り上げていきたいフリーペーパーです。下北沢で長年活躍するロックスターといえば尾形回帰!ということで、お声がけしました。
尾形:下北はよく来ますね。上京して最初は世田谷代田と新代田の間くらいに住んでいて、その後は池ノ上に住んだりとか、今も自転車で来れる圏内なんです。しかも何でも揃うじゃないですか。食べたり飲んだりもできるし、音楽もあるし。

――よく行く場所はありますか?
尾形:ライブハウスと飲み屋が多いですね。下北沢応援団 今成とか、生ビールが180円とかでめちゃくちゃ安いです。だからロックバンドの人たちが集まって飲む時は、ばかみたいに飲むやつとかもいるので連れて行きますね。彼らは質より量なので(笑)。そこに行くと大抵知り合いのバンドマンがいるので僕らは「ロックセレブが集まる店」って言っているんですけど。

――いい響きですね(笑)
尾形:あとは、本を買いに来ます。ヴィレッジヴァンガードもよく行きますし、古本屋さんだとDORAMA。古着屋さんだと、NEW YORK JOEとか、一番街の古着屋さん▲ブリーフ△ブリーフ▲とか。そこは知り合いがやってます。仲間たちとも、何かと「下北で集合」みたいなことが多いですね。


▲ブリーフ△ブリーフ▲

東京都世田谷区北沢3-31-5


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――「集合」して、何をすることが多いですか?
尾形:定期的に「バンドマン映画会」っていう活動をしています。月に2・3本、スケジュールの合った仲間で映画を観に行って、その後居酒屋でその映画について語る、っていう会。ジャンルにこだわらず、直感で作品を取り上げてやっていますね。最近だと『アナザーラウンド』とか『サマー・オブ・ソウル』とか。いつか書籍にしようと思って感想を録音してあります。でも文字起こしが面倒で(笑)

――やりますよ(笑)面白そうですね!
尾形:映画について喋った後に、それぞれのバンド活動の方向性をブレストして、そこでアイデアが固まったりするんです。この前のCLUB 251のライブで「POWER TO JAPAN」の公開MV撮影もやったんですけど、その演出もそこで決まりました。

ここ4年くらいは図書館によくいます

――「POWER TO JAPAN」は東日本大震災のときにチャリティーでたくさんのアーティストを集めて収録されていた楽曲ですよね。
尾形:今またコロナで音楽業界が大変な状況なので、この曲を再録して、みんなにハイテンションのパワーを与えたいと思ってやり始めました。

――10年越しに始動されるということで、今回はどういった形になるんでしょうか?
尾形:HEREとここ数年よく対バンしているバンドを中心に呼んで、HEREプロデュースでレコーディングしています。アルカラの太佑さんとか、9mmの卓郎くんとかにもディレクションしたんですよ。楽曲提供しているアイドルをプロデュースするのとはまた違った感覚で、面白かったです(笑)

――初回とまた異なったラインナップで、たくさんの方が参加されていますね。
尾形:当初のイメージとしてはオーディエンスにも参加してもらって、シンガロングする部分を全国各地でライブ録音したかったんですよ。でも今声が出せないじゃないですか。だからオーディエンスには、MV撮影で参加してもらう、っていう形に最終的になりましたね。多くの人を巻き込んで、一緒に一つのものを作り上げたときの楽しさって大きいから、HEREはここ数年それをテーマにしています。

――たくさんの人が参加することで、より楽しいな、と感じたきっかけになったことがあったんでしょうか?
尾形:結成当初に色んな人と一緒に作った「PHOENIX」っていうロックオペラとか、2011年の「POWER TO JAPAN」の中で、心を一つにする喜びを感じていきましたね。

――そうやって人を巻き込んで色んなアイデアを実現していくのが尾形さんの活動スタイルの一つですよね。コロナ禍のライブでお客さんに、歓声の代わりとなる打楽器を持ち込んでもらっているのには驚きました。
尾形:太鼓をぶら下げている方とか、見たことない民族楽器を持って来る方もいて、ちょっとした大喜利大会になっています(笑)お客さんのサウンドチェックとかもやっています。

――観客は、歓声をあげるけど音が鳴るものは持っていかない、というのがこれまでのライブの常識だったじゃないですか。その常識を破る突飛なアイデアですよね。そういったアイデアはどんな時に思いつくんですか?
尾形:飲みに行って、自分の考えをざっくばらんに話してみるっていうのは、おすすめです。喋ることで、自分自身で気付くことがあります。思えば、バンドマン映画会の人たちに一番よく話を聞いてもらっているかもしれないですね。そこで出たアイデアをメンバーに聞いてもらって、さらに研ぎ澄ましていきます。

――まだアイデアが固まる前に言葉に出す、っていうことですか。
尾形:そうですね。そこで生まれた面白いアイデアは、その場で全部メモします。色んなジャンルのメモ欄に分けていて、例えば歌詞のアイデア、バンド活動のアイデア、7枚目のアルバムのアイデア……といった感じですね。

――真似させてもらいます!
尾形:勿論、思いつかないときもあるんですけど、いつも締め切りギリギリでなんとかなっていますね。

――そういう時、よく行く場所やルーティンはありますか?
尾形:ここ4年くらいは図書館によくいますね。自宅の周りに3つくらいピックアップして、巡っています。パソコンが使用
出来る机を借りられるんですけど、、机が2時間制で延長できなかったりするので、そこで終わったら別の図書館に行って。

――試験前の大学生みたいですね(笑)
尾形:学生の横に並んで仕事してます(笑)図書館に行ったら色んな本があるじゃないですか。気になるものを片っ端から持ってきて濫読して、感化されて色々思いついていく、っていう感じです。

――最近面白かった本はありますか?
尾形:文学も好きですけど、最近は職業病でその世界観に没頭できなくなりましたね。でも穂村弘さんの短歌とかエッセイとかは、ぱっと読めるので好きです。言葉のリズムや切り口は、曲作りで影響を受けている気がしますね。

怒りとか、焦りとか、HEREで歌っていない感情を歌う

――今回ソロ活動をバンドセットで始められるということで、そのお話も伺いたいです。これまではギター1本で「弾き叫び」の形で活動されていましたよね。
尾形:「弾き叫び」は4年くらい前から定期的に活動し始めて、当初はHEREと同じ曲をやってたんです。でも「弾き叫び独自の曲を聴きたい」と言われることが多くて。それでオリジナル曲を定期的に作っていく中で、去年くらいからラップとアコースティックギターのスタイルという一つの方向性が見えてきたので、バンドで鳴らしたいという願望が溢れてきました。

――最近の「弾き叫び」はラップ口調で言葉を乗せていますよね。
尾形:メロディに歌詞を当てはめようとすると、どうしても言葉を削っていく作業になるんですが、ラップであれば譜割りとかもそこまで気にしなくていいので、自由に言葉を紡げるんですよね。そういう部分も今までと違って新鮮に感じています。

――HEREとの違いはどういった部分ですか?
尾形:ソロは怒りとか、焦りとか、HEREで歌っていない感情を歌うことにしていて。もっとパーソナルで狭い世界観ですね。僕なりの四畳半フォークです。あと大きく違うのは、僕がエレキギターを弾いています。

――ファンの皆さんも楽しみにしているところですね。
尾形:今一生懸命練習しているところです。ドラムのアルカラの疋田くんも、壱くんも、素晴らしいプレイヤーなので、俺がギターボーカルで入って行ったときに俺、どうなっちゃうんだろう。そういうドキドキ感がありますね。あとは実はレコーディングエンジニアとして、HEREの武田が参加しているんですよ。そういう意味で僕としても新しい活動なんですけど、武田にとっても初めての挑戦ですね。

――音源のリリースの予定は年内、ということで楽しみにしています。まずは10月27日(水)に下北沢 CLUB 251ですね!ありがとうございました。
<written by 柴田真希 / PHOTO by 高畠正人>

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