2021.11.22「下北偶像音楽倶楽部」LIVE REPORT

今年10月に発足したばかりの本サイト・SOGが主催する次世代のアイドルイベント「下北偶像音楽倶楽部」。初回となる第零回が11月22日に下北沢CLUB251で開催された。今回はEDMを基調としたアイドルなど6組が参加。どこか妖しげなイベント名同様、密会のようなアンダーグラウンドな空気感を感じるイベントとなった。

初回トップバッターを担当したのは、SOGが発行するフリーマガジン、4COUNTの表紙を飾った9DayzGlitchClubTokyo……ではなく、そのプロデュースを務めるクマのソロプロジェクト、CamouflageHz。

「アイドル文化を作っていこうというイベントを作るのを手伝いました。昨日発表、今日開催というスケジュールにもかかわらず集まっていただいてありがとうございます!」と挨拶すると、低く身体に響くビートに載せたミドルナンバー「Looping Hush」でスタート。「アイドルのイベントなのにトップがおじさんって大丈夫なのか?」と本人も口にしていたようにアイドルイベントという主旨からするとアウェーであるにもかかわらず、リリックの合間に「私免許更新してゴールド免許になりました!みんなも免許ゴールド目指してね!」と話すなど肩肘張らないパフォーマンスでオーディエンスを盛り上げていく。

自らが作詞作曲した9Dayzの楽曲”Brand new Stimulate”、「あとで9Dayzもこの曲やります」と”題名のない不完全な夜に”のカバーも披露し、ファンを喜ばせた。9Dayzが3人で歌う楽曲を1人で歌うことで感じる勢いや、作詞を担当した本人だからこそ乗る感情が9Dayzバージョンとは異なり、聴きごたえがある。バックライト中心で彩られる暗めのステージはフロアと地続きになっている感覚を強調し、一体感を作り出す。ロックとEDMの融合を見せた”multiplier Lie”では、ときに叫ぶように、またささやくように歌い、ボーカルとしての幅を見せた。イベントのコンセプトを踏まえたMCや楽曲は開会宣言のようで、ユーモアのあるステージで会場を温めた。

続いてステージに立ったのは、アイドルグループMy Best Friendから小倉未帆(My Best Friendでは小倉もなかとして活動)。笑顔でクラップを求めると「RISE UP!」のポジティブな歌詞を瑞々しく歌い上げる。振りの隅々からアイドルらしいキュートさを感じるが、歌声は覇気があり、可愛らしくも芯の強さを感じる。彼女のキャラクターをそのまま写し取っているかのようだ。続いて披露したのは「悲しくなる前に」。しっとりと切ない歌詞をときにエモーショナルに歌い上げた。印象の異なる2曲を披露すると「今日は本当にありがとうございました!」とステージを終えた。

SEが流れる中一人ずつステージに登場した9DayzGlitchClubTokyoは、ラップ調でかわるがわるリリックを紡ぐ”無神経night walker-rebuild-”でスタート。”fray”では歌だけでなく間奏部もキレのある振りで魅了していく。サトウの低音が効いた声、ウドンのしなやかなボーカルといしがきの癖のある甘い歌声。3人の異なる色を持ったボーカルが9Dayzの楽曲をさらにビビッドにする。

勢いが炸裂した”myサイケ”は特にサトウの声の幅が魅力的で、音の低いパートやがなりがワイルドかと思えば、ファルセットが響く柔らかいパートも見事に表現する。サビで雰囲気がガラッと変わる楽曲の展開にも目を奪われる。

そして本日2度目の”題名のない不完全な夜に”へ。3人で構築されるビート感のあるダンスも見ごたえがある。続くのはしっとりとバラード調の”アスファルトのシャハル”。落ち着いた声で3人並んで声を届けた。一転して”BadGirlsBallet”では〈私の正義をアナタなんかに壊させやしない〉〈目障りなら触らないで〉というとげとげしい歌詞がクールに歌われる。時折メンバーがこぼす笑みがあまりにキュートで、そのギャップが歌詞の攻撃力を余計に高めているようだ。

そして〈僕は誰にも嫌われたくなかっただけなのに〉と切実に激しく歌う”アザミ”を披露。目まぐるしく変わるフォーメーションで見せるクールなパフォーマンスと轟音のEDMが圧倒した。

この密会を通じ、どのような文化が形成されていくのか。

2番手、小倉と同じくMy Best Friendから参加したDJちいまゆ a.k.a.黛実初芽はなんとこの日がDJデビュー。ほんわかと柔らかな雰囲気で挨拶をし、KOTONOHOUSE作曲”Inverted Pyramid”を流しはじめる。パンチの効いたアーティストが揃いオーディエンスも好きに楽しむというアングラ感漂う様子をみて「まさに密会ですね」と言葉を弾ませる。9割の発言の語尾に「~」がついているようなゆるい喋り口のちいまゆだが、一方で「今日DJミスったらこれ飲みます!」と小瓶のクライナーをおもむろに取り出しDJブースの前にいくつも並べると言ったハードな一面も見せる。

ななひらの歌う”ベースラインやってる?笑”を流しながら「私を見に来てくれているファンが男の子より女の子が多いからナンパしに来ました~」と楽しそうに語りかけると、オーディエンスが拍手で応えた。ななひらの底抜けに明るいボーカルとちいまゆの雰囲気がマッチし、明るい空気に包まれる。PSYQUIの”Hype”やCY8ER”はくちゅーむ”、YUC’eの”Night Club Junkie”といったハイパーポップの定番曲を次々にかけ、オーディエンスとともにちいまゆも身体を揺らす。

時折「あれ?今の怪しくなかった?」「やっちゃったね~乾杯!」とクライナーをかかげ、アルコール片手に楽しむオーディエンスと乾杯。美味しそうに飲み干し、満足そうに身体を揺らすちいまゆが一番楽しそうだ。ビリーアイリッシュの”bud guy”で締めながら「なんかこれで締めるの違う気がしてきた!大丈夫?」と言いつつ自己紹介をし、「無事デビューした~」と締めくくった。

2人体制で登場したEVEは”涙がブルーで明日がGO!”であふれ出るパワーとは裏腹にどこか大人っぽい声でボーカルを聴かせる。和風なテイストを感じる”一か八か”へと続け、飲み込むような轟音を届けた。結成1周年を迎えたことをオーディエンスとともに祝福するとファルセットも交えて歌う”ファミリーネーム”へ。激しく聴かせる”僕から君へ告ぐ”と続く。デスボイス担当のアイネは欠席であったが、それでもヘドバンも組み込んだ振りの激しさや迫力を感じる歌い方によって滲み出る熱が充満する。リトラの激しいボーカルとファルセットを綺麗に聴かせるチヒロ、2人の歌い方の違いで幅を見せ、”ロンリーヒーロー”で幕を閉じた。

この日のトリを飾ったLogiNeonは”虧月”でスタート。ひとりずつリリックを紡ぎ息の合ったフォーメーションダンスでクールに見せたかと思えば、とびきりにキュートな”閃光ランナー”、”Positive+Connect”と続ける。ビジュアルから受ける印象通りのキュートな楽曲ながら低音の効いたビートが身体に響き、その迫力は歌のないドロップ部分が多いLogiNeonの楽曲にマッチする。真似やすいシンプルな振りが繰り返されるとオーディエンスも真似て踊り、ファンの垣根を越えて一体感が形成された。”閃光ランナー””Positive+Connect”を再度披露すると、振りや手拍子で思い思いに楽しんだ。純粋な甘さが弾けたLogiNeon。少ない曲数だからこそオーディエンスをこれでもかと巻き込んだステージであった。

オーディエンスも演者も自由な印象があった下北沢偶像音楽倶楽部 第零回。EDMを中心にしたラウドな音で地下を揺らし、楽曲だけでなくときにパフォーマンスとのギャップ、ときに素直な人柄で各々がオーディエンスを魅了した。この密会を通じ、どのような文化が形成されていくのか。次回の開催にも目が離せない。

<レポート:村上麗奈/PHOTO:Kokoro Niimi>


「下北偶像音楽倶楽部」

会場:東京・下北沢CLUB251

2021年11月22日(月) 出演:9DayzGlitchClubTokyo/LogiNeoN/小倉未帆/DJちいまゆ a.k.a.黛実初芽/EVE/CamouflageHz

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