2021.11.30「SOG presents」LIVE REPORT

SOGpresentsライブが下北沢251にて開催された。 下北沢専門音楽サイト、SOGがバンドを集めたイベントを主催するのは今回が初。出演した3組はそれぞれが抱く感情を楽曲にのせ、オーディエンスとの心理的な距離感が近いライブを展開した。

トップバッターはエレン。ギターボーカルの有田、ベースの吉田とサポートドラマーの3人が向かい合って鳴らす音は息が合っていて迫力がある。「AMBIVALENT」をはじめとする楽曲は諦観が見え隠れするが、威嚇するような威勢のいいボーカルと歪んだギターが意思の強さを思わせる。〈撃たれるのが怖いのなら/そこにいなさい/守れないよ〉と歌う「SCIENCE FICTION」は冒頭のフレーズから強さと弱さの両面を映し出しているが、エレンの楽曲にはそういった両面を強がりが勝る形で描いているように思う。

その強がりはミドルナンバーの「insomnia」でも同様だ。間奏でバンドがヒートアップ、テンポを落とした有田の切実な弾き語りに続いてバンドイン、そして転調という怒涛の展開。展開を通して感情の移り変わりを、思いの強さをいくつものアプローチで試みているようにも見えた。
孤独を思わせる「花冷え」ののち、「漂流」では疾走感のある曲調をバンド一丸となって駆け抜けていく。「飛燕」は控え目なベースが牽引し、歪んだギターを鳴らしながら有田が突き破るように情景を描写していく。切なさもすべてロックサウンドに消化するのだ、という意思が感じられるような、ぶれないギターの音作りだ。

「喋っている時間が勿体ないので新曲やります」と間髪入れずに披露されたのは「最低」。曲調や歌詞には可愛らしさも感じるがあくまでもロックサウンドで鳴らされる。〈なりふり構ってられないわ〉の歌詞が勢いのある曲調とバンドサウンドに見事にマッチ。〈悪いかよ〉と思わずという様子の口調の異なるフレーズや〈不幸になればなるほど幸せ〉という不穏な歌詞がエレンの諦観と強さの両面を歌うスタンスに通じる。
コンパクトな楽曲を疾走感を保ったまま演奏し続けたエレンのラストは「empteen」。彼女たちのライブには楽曲を届ける気概があったし、楽曲には性格なのかバンドに対する意気込みなのか、あふれ出る気概が見え隠れした。バンドの実態をさらけ出した有田は「ありがとうございました!」と笑顔を見せた。

一方で二組目のThe Naughty Dogsは彼らの優しさがよく伝わるステージを展開。RyUの爽やかなボーカルにそれを包むようなドラムとベースが重なる。「スタートライン」ではKAZUKIのドラムがサビで大きく展開した。

リバーヴィーなギターから始まる「日々」は歌声にちょまのベースが並走するような優しさがある。歌詞だけでなく音でも感情を描くのを得意とする彼らは、落ちサビからのドラマチックな展開で音での大きな展開を見せた。「次の曲は天国にいるおばあちゃんに向けて」と披露した「410」も同じく、柔らかいギターと存在感がありつつも丸みのある音色のハットが優しい印象を作り上げる。マイクを握りしめ空に手をかざし、伸びのいい声で歌い上げる。感情を咀嚼して歌に反映するシンガーとしての強みも見せた。

バラードの「いつまでも」では、日常を描き出す。時を刻むようなベースにギターが水彩のように溶け込む。リバーブが柔らかい「My Treasure」では包み込むような安心感を演出し、「Endless Beautiful Story」へ。コーラスのハーモニーが美しく届けられ、力強いドラムの音色に背中を押される。目の前の人に届けるように奏でた音色が優しかった。

曲を通して自身の思いを伝えた2組に対して、トリを飾ったWELL DONE SABOTAGEは曲中で描かれる感情に没入し、作品中のそれを表現しているようだった。

Vampire Weekendの「Cousins」をSEにステージに登場した彼らは「ロックンロール」から宣戦布告するようにステージをはじめる。引き締まったドラムの音で「New Order」を披露した。五味の声色はどこか淡々としているようでもあって、サウンドに彩られることで楽曲ごとに表情を変える。「声は出せないけど心で楽しめると思うんです」と語った彼らは「you」へ。一打で注目させる説得力があるドラムのフィルの豊富さやベースの安定感、ボーカルの平熱な温度感。3人の等身大のパフォーマンスにオーディエンスが拳を挙げて応えた。

一変して細かいギターフレーズとうねる音色のベースがキャッチーであり妖艶でもある「君はクレイジー」、同期やシンセベースが景色を一変させる「Age」と楽曲によって異なる顔を見せていく。サビで張り上げる声と、そこに至るまでのバンドサウンドに溶け込むような声の違いでもオーディエンスを魅了した。

「冬の曲やります」と言って演奏された「絶対零度」ではバックライトに照らされ美しいバラードを奏でる。タムの迫力が展開を予感させる「初恋」に続き、学校のチャイムを思わせる音からはじまる「Father Time」が日記のように紡がれる。近くにいるオーディエンスひとりひとりのはじまりに寄り添うように希望的であった。

「僕らはいつだってライブハウスにいます。またライブハウスで会いましょう!」。これ以上ない頼もしい言葉を残したWELL DONE SABOTAGE。曲に付随する感情や意思を演奏を通して感じ取ることのできる、ライブハウス流のコミュニケーションを達成した日であった。

<レポート:村上麗奈/PHOTO:かい(エレン ),北島凜音@rio_9979(WELL DONE SABOTAGE)>


「SOG presents」

会場:東京・下北沢CLUB251

2021年11月30日(火) 出演:エレン /The Naughty Dogs/WELL DONE SABOTAGE

12月6日23:59まで当日ライブ模様のアーカイブ配信中!こちらから

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