「アダバナ」
徒花とは、実を結ばず散る花のことである。
我々がyoutubeで投稿していたオルブラジオはメンバーのトーク形式だが、その出張版であるこの連載では、私個人のああだこうだを好き勝手につらつらと書き連ねる〝ひとり喋り〟であり、話に花が咲いても無駄であるという意味合いで連載タイトルを名付けた。サポートの小林くんには回りくどいと言われてしまったが。
ひとり喋りという割に堅い文章になったのは多少反省している。
のんべんだらりとバンドを続けても意味はない、とよくメンバーに叱られたものだが、どんな形であれ続いていくことは素晴らしいことだと思っている。永遠などない。どんなに無為に過ごしてもいつかは終わる。ならば醜い花でも咲いていた方がいいか、と思っていたのだが、我々は咲き終えて枯れていくことを選んだ。
なぜ活休をすることを選んだのか、全てではないがここに記しておこうと思う。(一つ断っておきたいのは、これは私から見たバンドの景色であり想いであって、当然他のメンバーは違った考えと見え方がある。あくまで私個人の話だ。)
人生を賭けたバンド、というと大仰かもしれないがそう言って差し支えないだろう。売れたかった。このバンドで飯を食うことができるようになれたならと、そう願っていた。
しかし、このバンドが活動を休止する引き金となったのは私が脱退の申し入れをしたからだ。
初出し情報のはずだが、驚かせたろうか?
それまで私が、その手の話をメンバーに切り出したことはなかった。他のメンバーから脱退の申し出は過去に幾度かあったが、むしろ、そのたびに引き止めるのは私だったくらいだ。
その私が脱退を申し出たことは、バンドが歩みを止めるのに十分な理由だった。
自分で言うのも恥ずかしいが、このバンドをいちばん信じ愛していたのは私だと胸を張って言える。うだつが上がらないバンドであったことは間違いないが、我ながらいいバンドだと思っていたし、何よりそう思わせてくれる人たちがバンドの周りを取り巻いていた。
ならばどうして活動を休止する必要があったのか?
それはこのバンドの楽曲を作ることが楽しくない、もっといえば苦しい作業になってしまっていたからだ。そして自分でも最低な物言いだと思うが、次第にバンドに楽曲を持ち寄ることが〝もったいない〟と思うようになっていた。流行りのSDGsではない。
音楽、さらに言えばバンドという形態での表現に惹かれた理由のひとつに、未知への感動がある。
自分が持ってきた楽曲が、メンバーのアイデアやプレイによって自分の想像を超えた光を放つ。
楽曲制作で煮詰まってどんよりとしたスタジオが、言葉と音のコミュニケーションで晴れ間を見せた瞬間、走り出したくなるような歓びを得る。パズルのピースがスッとハマるような感覚、というと伝わるだろうか。
自分の想像に及ばないその瞬間をメンバーと共有できたときにこそ、得も言われぬ興奮がある。センスオブワンダーとはこういう感覚なのではないかとたびたび思ったものだ。
しかし、それがいつしか感じられなくなっていた。もちろんメンバーのことはプレイヤーとして、友人として、仕事仲間として信頼していたのは言うまでもないが、この場所で何かを生みだすことに私は疲弊していた。もちろん私自身の実力不足であったのは間違いない。メンバーをうまく導くことができなかった。
もともと遅筆ではあったが、次第にバンドに曲をおろすことをしなくなり、はっきりともう曲を書かないと伝えた。メンバーは困惑していた。それはそうだろう。これまでメインのソングライターだった私がそれを放棄したのだから。
しかし、OLD BROWN OWLには曲を書けるメンバーが私以外にもいた。ならばバンドを続けることはできる。
当時の私は、それでもなおバンドの存続を願った。
しかし、次第にそれもままならなくなる。
自分が書きたいものと、メンバーが求めるものの違い、金銭面、メンバーそれぞれの生活と将来のビジョンの変化など…さまざまな理由が複合的に合わさり、その時点で全員の選択肢が〝活動休止〟に収束したのだ。
OLD BROWN OWL 岩崎弘
OLD BROWN OWL Vo Gt岩崎弘(イワサキ ヒロシ) Gt 衣袋航平(イタイ コウヘイ) Ba 三戸部光(ミトベ ヒカル) サポート Dr 小林弥央(コバヤシ ミオ) |
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